原因
麻疹ウイルスによる。感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染と多彩。
臨床像
麻疹患者の発疹麻疹には、症状の出現する順序や症状の続く期間に個人差が少ないという特徴がある。ただし、免疫のある患者では、非典型的で軽症な経過をとることがある。ワクチン接種歴により軽く済むといわれるが、後年再び感染することが多い。
カタル期
発症すると、発熱(39℃程度の高熱となることが多い)に、咳、鼻汁、結膜充血、眼脂(がんし、目やにのこと)といったカタル症状を伴う。発熱2~3日目で頬粘膜にコプリック (Koplik) 斑が出現する。コプリック斑を認めれば特異的な診断価値が高い。カタル期は3~4日間続いた後、いったん解熱する。
他者への感染力は、カタル期に最も強い。
発疹期
カタル期の後にいったん解熱するが、半日ほどで再び39~40℃の高熱が出現し(二峰性発熱)、発疹が出現する。発疹は体幹や顔面から目立ち始め、後に四肢の末梢にまで及ぶ。
発疹は鮮紅色で、やや隆起している。特に体幹では癒合して体全体を覆うようになるが、一部には健常皮膚を残す。
発熱・発疹のほか、咳・鼻汁もいっそう強くなり、下痢を伴うことも多い。口腔粘膜が荒れて痛みを伴う。これらの症状と高熱に伴う全身倦怠感のため、経口摂取は不良となり、特に乳幼児では脱水になりやすい。
発疹期は発疹出現後72時間程度持続する。これ以上長い発熱が続く場合には、細菌による二次感染の疑いがある。
回復期
解熱後も咳は強く残るが徐々に改善してくる。発疹は退色後、色素沈着を残すものの、5~6日程で皮がむけるように取れるとも報告されている。回復期2日目ごろまでは感染力が残っているため、学校保健法により解熱後3日を経過するまでは出席停止の措置がとられる。
合併症
麻疹に感染・発症すると一時的な免疫力低下が起こる(ウイルスがリンパ球などで繁殖するため)ので、感染症にかかりやすくなる。発熱時にへたに解熱剤などを投与した場合、細菌による二次感染の危険性が高まる。また、合併症は以下のように区分される。
脳・神経系の合併症
亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis、略称:SSPE)
この病気は麻疹に感染後数年してから発症し、ゆっくりと進行する予後不良の脳炎である。麻疹に罹患した人の数万人に一人が発症するといわれている。まれに予防接種でも発症することがある。
ウイルス性脳炎
1000人に1人くらいの割合で発症。熱発の程度と脳炎の発症率に相関はない。発症すると1/6が死亡、1/3に神経系の障害が残る。
咽頭~気道系の合併症
麻疹ウイルスによるもの(中耳炎、肺炎、細気管支炎、仮性クループ)
細菌の二次感染によるもの(中耳炎、肺炎、気管支炎、結核の悪化)
その他
下痢
口内炎
カンジダ症
治療
特異的治療法はなく、解熱剤、鎮咳去痰薬、輸液や酸素投与などの支持療法を行う。
ビタミンAの投与が症状の悪化を防ぎうるとの報告があったが、発展途上国のような低栄養(ビタミンA欠乏)状態の患児のみに有効であるとの指摘もある。
細菌性二次感染は少なからず見られるものの、抗菌薬の予防投薬は二次感染を予防するという根拠がなく、必ずしも推奨されない。
免疫賦活薬イノシンプラノベクスは抗ウイルス作用を示す。麻疹患者に接触後72時間以内の免疫グロブリン製剤の投与が、麻疹発症を予防するか、あるいは症状を軽減させることが認められている。しかしながら血液製剤であるため、適応は原則として、ワクチン未接種の乳幼児や免疫不全患者など、ハイリスク患者に限られる。
予防
小児期に予防接種が行われている。しかし日本の予防接種率は低い。そのために、日本では麻疹の罹患数が多く麻疹輸出国として非難されている。ごくまれにではあるが、内攻型麻疹や出血性麻疹といった重症型の麻疹を発症することもあるので、予防接種は重要とされる。
罹患したことのある人、ワクチン接種を行った人は終生免疫を獲得するとされている。しかし、ワクチン接種を行っていても十分な抗体価がつかなかった場合や、麻疹ウイルスとの接触がないまま長時間を経過することによって抗体価が低下してしまった場合、麻疹を発症することがある。このような場合は典型的な麻疹の経過をとらず、種々の症状が軽度であったり、経過が短かったりすることが多い(修飾麻疹)。
ワクチン接種後の抗体価の低下を防ぐため、諸外国では年長幼児~学童期に2回目のワクチン接種を行い、抗体価の再上昇(ブースター効果)を図っている。日本においても、2006年4月以降に1回目のワクチン接種を受ける児からは、就学前の1年間に2回目の接種を実施できるように予防接種法が改正された(麻疹・風疹混合ワクチンの項を参照)。
アメリカでは1970年代後期より麻疹ワクチンの徹底した導入により、現在の麻疹発生率は年間200人程度となり、メディカルスクールの学生の実地教育にも事欠くほどに患者が減少したと、言われている。
発生
平安時代以後度々文献に登場する疫病の一つ「あかもがさ(赤斑瘡/赤瘡)」は今日の「麻疹」に該当するというのが通説である。
日本では例年、全国の小児科から1-3万人の症例が報告されているが、実際の発生数は年間10万人を超えると考えられている。
報告のうち2才以下の症例が半数以上である。脳炎などにより、2才未満の乳幼児を中心に年間数十人が死亡している。これはワクチンの接種率が日本では低いことによる。[1]
近年においては、2006年4月から5月にかけて茨城県と千葉県で集団発生した。国立感染症研究所感染症情報センターは、緊急情報を出した。2006年の患者数は、茨城県は83人、千葉県は6人。
2007年における集団感染
この節には、現在進行中のことを扱っている文章が含まれています。
2007年は4月から東京都や神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府などで集団発生している。また大学生の発症者が多く、感染拡大の防止のために休講の処置をとった大学も、首都圏を中心に増加している。これにより、大学野球などのスポーツ活動や、大学の施設を利用した各種試験などに影響が出ている。
また下記が休講を報じられた大学:
上智大学、白百合女子大学、創価大学、東京工科大学、専修大学、和光大学、成蹊大学、駒沢大学、東北学院大学、中央大学、早稲田大学、東京農業大学、日本大学文理学部・経済学部・商学部・芸術学部、大正大学、昭和女子大学、横浜市立大学医学部
このように麻疹の流行が起きた背景には、MMRワクチンの混乱によりワクチン接種率が低い世代の存在がある。1993年のMMRワクチン騒動に際しては
「MMRワクチンは子どものためでなく、研究者や企業のためだった」とある行政機関の医師が指摘していたが、経過を振り返ると、その通りだと思う。三度の手間を一度に減らすといいながら、当面子どもに不可欠なワクチンは麻しんだけ。おたふくかぜは髄膜炎と男性不妊が強調されすぎ、風しんは妊婦のために流行を抑えたいという社会防衛的な狙いがみえる。メーカーには、麻しん以外の二つの接種率が飛躍的に高まるうまみがあった。 --1993年4月30日朝日新聞、田辺功
といったマスコミの過剰報道の影響も指摘されている。
関連法規
感染症法の第5類感染症に指定。
学校保健法による第2種学校伝染病に指定。
関連項目
感染症
発熱と発疹を起こす病気の一覧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』